はじめに

急に顔がほてる。理由もなく動悸がする。気分が沈んで、夜もよく眠れない。

「もう年だから」「更年期だから仕方ない」と、そのままにしていませんか。

厚生労働省の調査では、更年期の症状に当てはまるものを1つでも自覚している女性のうち、医療機関を受診していない人が40代で81.7%、50代で78.9%でした(出典2)。症状があっても、受診していない人が多いのが現状です。

でも、その不調は更年期によるものとは限りません。似た症状の別の病気や、飲んでいる薬が関係していることもあります。

この記事では、更年期の基本と、更年期と似た症状の病気、受診の目安や相談先を、学会や公的機関の情報をもとにお伝えします。

更年期と更年期障害

閉経の前後5年ずつ、合わせて10年間を「更年期」といいます。日本人女性が閉経する平均年齢は50歳前後ですが、個人差が大きく、早い人で40代前半、遅い人で50代後半です(出典1)。

この時期に現れるさまざまな症状のうち、ほかの病気が原因ではないものを「更年期症状」といいます(出典2)。そのうち症状が重く、日常生活に支障が出る状態を「更年期障害」といいます(出典1)。

つまり、ある不調を「更年期症状」と言えるのは、ほかの病気ではないと確かめられてからです。この区別は自分ではつけにくいので、後で紹介する「似た症状の病気」を知っておくことが大切になります。

主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら減っていくことです。そこに、加齢によるからだの変化、気持ちの面の要因、家庭や職場の環境などが重なって起こると考えられています(出典1)。

症状は大きく3つ

更年期の症状は、大きく次の3つに分けられます(出典1)。

グループ主な症状
ほてりや汗ほてり、のぼせ、急な発汗(ホットフラッシュ)
からだの症状めまい、動悸、頭痛、肩こり、腰や関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさ
こころの症状気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠

症状の種類がとても幅広いことが分かります。だからこそ、「何でも更年期のせい」に見えてしまいやすいのです。

更年期と似た症状の病気もあります

日本産科婦人科学会は、更年期のさまざまな症状の陰に深刻な病気が隠れていないか確かめることが大切だとしています。そのため、婦人科だけでなく、内科、整形外科、耳鼻科、心療内科、精神科の受診をすすめることもあるそうです(出典1)。

ここでは、代表的な例をいくつか紹介します。

甲状腺の病気

甲状腺の病気は、女性のほうが圧倒的にかかりやすい病気です(出典3)。

  • 橋本病:甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、更年期のころから年齢とともに増えます。甲状腺の働きが低下すると、冷え、むくみ、肌の乾燥、便秘、無気力感などが出て、更年期の症状とよく似ているため見逃されがちです(出典3)
  • バセドウ病(甲状腺の働きが強くなりすぎる病気):20〜30代に多い病気ですが、動悸、手の震え、落ち着かない、情緒不安定など、やはり更年期と似た症状が出ます(出典3)

首の腫れなどの異常を感じたら、内分泌内科などを受診しましょう(出典3)。

心臓や肺の病気

更年期の年代には、はっきりした理由のない動悸や息苦しさを感じることがあります。ただしそれは、心臓や肺の病気がないことが前提です。日本女性医学学会は、心電図などの検査を受けていない場合は、まず呼吸器・循環器の内科を受診するようすすめています(出典4)。

こころの病気

気分の落ち込みや意欲の低下、眠れないといった症状は、更年期でもよく見られます(出典1)。ただ、うつ病など、こころの病気が隠れていることもあります。つらい状態が続くときは、婦人科のほか、心療内科や精神科も相談先になります(出典1)。

飲んでいる薬の影響で、似た症状が出ることも

更年期と似た症状は、病気だけでなく、飲んでいる薬の副作用として出ることもあります。

たとえば、血管を広げて血圧を下げるタイプの薬の一部では、ほてり(顔が赤くなるなど)、動悸、頭痛などが副作用として報告されています(出典5)。ただし、症状が出ても薬が原因とは限りません。「新しい薬を飲み始めてから、ほてりや動悸が出てきた」という場合は、薬との関係を処方した医師か薬剤師に確認してください。

そして、気になっても、自分の判断で薬をやめないでください。薬をやめると、もとの病気が悪化するおそれがあります(出典5)。急に強い症状が出たときは、我慢せず、すぐに医療機関に相談しましょう。

長く飲んでいる薬との付き合い方については、こちらのコラムもご覧ください。

→(第1弾コラム「長く飲んでいる薬、このままでいい? 医師に『減らしたい』と言い出せない方へ」へのリンク)

受診の目安と相談先

日本女性医学学会は、更年期の症状が気になるようであれば医療機関を受診し、きちんと診断を受けて対処するようすすめています(出典6)。「これくらいで受診していいのかな」と迷う必要はありません。

特に、次のような場合は早めに相談しましょう。

  • 仕事や家事、睡眠など、日常生活に支障が出ている(出典1)
  • 症状が続いていて、不安な気持ちが消えない

まずはどこに相談する?

迷ったら、まずは婦人科か、かかりつけの医師に相談するのが基本です(出典1)。症状によっては、ほかの診療科が向いていることもあります。

気になる症状相談先の例
ほてり、発汗、月経の乱れなど婦人科(出典1)
動悸や息切れがあり、心臓の検査を受けたことがない呼吸器・循環器の内科(出典4)
首の腫れ、冷えやむくみ、だるさが続く内科、内分泌内科(出典3)
気分の落ち込みや不安、不眠が続く婦人科のほか、心療内科や精神科(出典1)

なお、突然の強い胸の痛みや急な息苦しさなど、いつもと違う強い症状があるときは、受診を待たずに119番に連絡してください。救急車を呼ぶか迷うときは、総務省消防庁の全国版救急受診アプリ「Q助」で、症状から緊急度の目安を確認できます(出典7)。

更年期を専門にしている医師は、日本女性医学学会のホームページから地域ごとに探せます(出典6)。

更年期障害の治療には、いくつかの選択肢があります

更年期障害の治療では、まず問診で困っていることを丁寧に聞いたうえで、食事や運動、睡眠などの生活習慣の見直し、心理療法、薬による治療が検討されます(出典1)。

薬による治療は、大きく3つに分けられます(出典1)。

  • ホルモン補充療法(HRT):減っていく女性ホルモンを少量補う治療です。飲み薬、貼り薬、塗り薬など、いくつかのタイプがあります
  • 漢方薬:症状や体質に合わせて選ぶ薬です
  • こころの症状に使う薬:気分の落ち込みや不安、不眠がつらいときに使われる薬です

どの治療が合うか、どう組み合わせるかは、症状の種類や重さ、体質、持病、本人の希望などによって一人ひとり違います。学会も、主治医とよく相談して自分に合った治療法を選ぶようすすめています(出典1)。気になる治療法や希望があれば、症状と一緒に医師に伝えてください。

受診の前にメモしておくこと

更年期の症状は幅広く、診察室で全部を思い出して伝えるのは大変です。次のことをメモにして持っていくと、医師に状況が伝わりやすくなります。

  • 気になる症状と、いつ頃から続いているか
  • 症状が出るタイミング(朝・夜、仕事中、寝ているときなど)
  • 日常生活への影響(眠れない、仕事や家事に集中できない、など)
  • 最後の月経の時期と、最近の月経の様子(周期が短い・長い、量の変化など)
  • 今飲んでいる薬のすべて(ほかの病院の薬、市販薬、サプリメントも含めて)
  • 最近飲み始めた薬があれば、その時期
  • 聞きたいことや、不安に思っていること

お薬手帳があれば、一緒に持っていきましょう。

薬局でお手伝いできること

「メモをまとめるのが難しい」「飲んでいる薬が多くて整理できない」という方は、薬局を頼ってください。にこ薬局では、受診の前の準備をお手伝いしています。

  • お薬の整理:ほかの病院の薬や市販薬、サプリメントも含めて、今飲んでいるものを一覧にします
  • 薬の影響の確認:気になる症状が、飲んでいる薬の副作用として知られているものかを確認し、医師に相談したほうがよい点をお伝えします
  • 相談メモづくり:受診のときに伝えたいことを、一緒に整理します

ご自宅にある薬を袋にまとめてお持ちいただく「ブラウンバッグ」という方法もあります。

なお、病気かどうかの診断や治療の判断は、医師が行うものです。薬局では、あなたが医師に相談しやすくなるための準備をお手伝いします。

にこ薬局はJR栗東駅東口から徒歩50秒! お買い物やお仕事の帰りにもお立ち寄りください。

まとめ

更年期の不調は、我慢するものではありません。似た症状の病気や薬の影響もあるので、「更年期だから」と自分で決めつけずに、婦人科やかかりつけの医師に相談してください。準備に困ったら、薬局に声をかけてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療については、医師または薬剤師にご相談ください。

出典

  1. 日本産科婦人科学会「更年期障害」2025年1月更新
  2. 厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査(結果概要)」2022年
  3. 厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト「甲状腺の病気」
  4. 日本女性医学学会「よくある女性の病気:動悸 息切れ」
  5. くすりのしおり「アムロジピンOD錠5mg「タカタ」」くすりの適正使用協議会
  6. 日本女性医学学会「よくある女性の病気【更年期女性に認められる症状】」
  7. 総務省消防庁「全国版救急受診アプリ(愛称「Q助」)」

執筆・監修

にこ薬局 薬剤師 小田垣

2020年3月、JR栗東駅前にてにこ薬局を開局。

最終更新日:2026年9月29日

本記事は、文献調査と原稿作成の一部にAIを利用し、薬剤師 小田垣が内容を確認・監修しています。