はじめに

「この薬、もう何年飲んでいるんだろう」

血圧の薬、コレステロールの薬、胃薬、眠るための薬。飲み始めたときには、きっと理由があったはずです。でも今も本当に必要なのか、自分ではよく分からない。続ける理由を知りたいし、できることなら減らしたい。

けれど診察室で「減らしたい」と口にするのは、先生の治療に文句をつけるようで気が引ける。薬局でお薬をお渡しするときにも、「この薬、やめてもいいですか?」「減らしたいんですが」というご相談をよくいただきます。

この記事では、長く飲んでいる薬に不安を感じたときの考え方と、主治医への相談のしかたを、診療ガイドラインや公的機関の情報をもとにお伝えします。

先に結論をお伝えします。大切なのは次の2つです。

  1. 自分の判断で薬をやめたり、減らしたりしないこと
  2. 「続けていいのか不安」という気持ちは、主治医に伝えていいこと

長く飲むこと自体は、悪いことではありません

まず知っておいてほしいのは、長く薬を飲み続けること自体は、悪いことではないということです。血圧やコレステロールの薬のように、病気の予防や悪化を防ぐために、飲み続けることが大切な薬もあります。

「不安になりやすい」とされる睡眠薬でも、考え方は同じです。国内の診療ガイドラインは、睡眠薬を基本的に期限なく飲む薬ではないとしたうえで、一部の方には長く飲み続ける治療が必要で、それも選択肢として認められるとしています(出典1)。

つまり、「続ける」も「減らす」も、どちらも治療の一部です。大事なのは、その時々の体の状態に合わせて、主治医と一緒に「今の自分に合っているか」を見直していくことです。

自分の判断でやめるのは、危険なことがあります

「減らしたい」と思ったとき、一番避けてほしいのが、自分の判断で急にやめることです。薬によっては、急にやめると元の症状がぶり返したり、かえって悪くなったりすることがあります。

眠るための薬や、不安をやわらげる薬の多くは「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」というグループに入ります。厚生労働省が患者さん向けにまとめた資料では、このグループの薬を長く飲み続けると、次のようなことが起こりうると説明されています(出典2)。

  • 効き目が弱くなり、同じ効果を得るために量が増えやすくなる(耐性)
  • 量を減らしたりやめたりしたときに、不快な症状が出やすくなる(身体依存)

その状態で量を減らしたりやめたりすると、「離脱症状」と呼ばれる不快な症状が出ることがあります。主な症状は次のとおりです(出典2)。

  • 不安や、ささいなことでのイライラ
  • 頭痛、吐き気

診療ガイドラインでは、睡眠薬を長く飲んだ後に休薬した人のうち、複数の離脱症状が出る方は20〜40%とされています(出典1)。

だからこそ、減らすときは主治医と相談しながら、時間をかけて進めることが大切です。

例えば、睡眠薬の場合

睡眠薬は、多くの方が使っている身近な薬です。少し古いデータですが、2009年の調査では、日本の成人の約20人に1人が睡眠薬の処方を受けていました(出典1)。一方で、日本人は睡眠薬に対する心理的な抵抗感がとても強いことも分かっています(出典1)。「やめたい」と感じるのは、決して珍しいことではありません。

主治医と減薬を考えるときの目安

ガイドラインでは、次の2つがそろっていることが、減薬や休薬を考える前提とされています(出典1)。

  1. 夜の不眠の症状がよくなっている
  2. よく眠れることで、日中の体や心の調子もよくなっている

ただし、当てはまるかどうかを自分で判断して、量を変えるのはやめてください。2つとも当てはまると感じたら、それを主治医に伝えて、一緒に判断してもらうのが安全です。

減らし方は、主治医と決める

睡眠薬の減らし方には、時間をかけて少しずつ量を減らす方法があります。薬を使わない治療や、気持ちの面のサポートを組み合わせると、うまく減らせる可能性が高まることも分かっています(出典1)。

どの薬から、どのくらいのペースで減らすかは、飲んでいる薬の種類や量、体の状態によって変わります。ここは必ず主治医と決めてください。

薬を使わない治療もあります

不眠症には「認知行動療法」という、薬を使わない治療法があります。睡眠の習慣や、眠りについての考え方を見直していく方法で、ガイドラインで効果が認められています。長く睡眠薬を飲んでいる方の減薬を後押しする効果も期待されています(出典1)。受けられるかどうかは、主治医に相談してみてください。

睡眠薬の種類も増えています

現在、睡眠薬には大きく4つのタイプがあります(出典3)。どの薬が合うかは、不眠のタイプや年齢、持病、ほかの薬との組み合わせによって決まります(出典3)。主治医は、症状や体質をふまえて今の薬を選んでいます。今の薬が適している場合もあります。気になることがあれば「今の私に合っている薬なのか」を主治医に聞いてみるのも一つの方法です。

お酒との組み合わせには注意

眠るためのお酒(寝酒)は、ガイドラインで勧められていません。また、睡眠薬とお酒を一緒に飲むことは原則として避けるべきとされています(出典1)。

眠れない原因を確かめることも大切です

ここまで薬の話をしてきましたが、そもそも何が原因で眠れないのかを確かめることも大切です。原因のひとつとして、たとえば更年期があります。更年期障害では、夜のほてりや寝汗で眠りが妨げられることが多く、約半数の方に不眠があるとされています(出典1)。

ガイドラインの作成時点(2013年)では、更年期の不眠に睡眠薬を長く使ったときの効果や安全性は、十分に確かめられていませんでした。そのためガイドラインでは、症状に応じて減薬や休薬も視野に入れるよう勧めています(出典1)。この場合も、量の調整は主治医と相談しながら進めてください。

また、眠れない原因には、ほかにも次のような病気が隠れていることがあります(出典1)。

  • うつ病による不眠
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

「眠れないのは更年期のせい」と自分で決めつけず、一度きちんと診てもらうことが大切です。眠れない原因になっている症状があれば、まずその治療を行うのが基本とされています(出典1)。

主治医への伝え方

「先生に悪いかな」と感じる方に、知っておいてほしい調査があります。アメリカの65歳以上の方を対象にした調査では、約92%が「医師が大丈夫と言えば、薬を1つ以上やめてもいい」と答えました(出典4)。50〜80歳を対象にした別の調査でも、約80%が同じように答えています(出典5)。

一方で後者の調査では、代わりの薬なしに薬をやめた人のうち、約36%が医療者に相談せずにやめていました(出典5)。「減らしたい」と思っている人は多いのに、その気持ちが相談につながっていないことがあるのです。

海外の調査なので、日本の状況にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、薬について気になっていることを伝えるのは、決して特別なことではありません。あなたの気持ちは、主治医にとっても治療を考えるための大切な情報です。

そのまま使える例文

  • 「この薬をずっと続けていいのか、最近気になっています。今の私に必要な理由を教えてもらえますか?」
  • 「調子が落ち着いてきたので、いつか減らせる時期が来るのか知りたいです」
  • 「実は飲み忘れることがあって、薬がこれだけ余っています」

ネットや記事の情報がきっかけでも構いません。ただ、伝えるときは「どこかで読んだから」よりも「自分がどう感じているか」を中心にすると、話が進みやすくなります。

診察の前にメモしておくこと

診察の時間は限られています。次のことをメモにして持っていくと、落ち着いて相談できます。

  • 今飲んでいる薬のすべて(ほかの病院の薬、市販薬、サプリメントも含めて)
  • それぞれ、いつ頃から飲んでいるか
  • 気になっている症状(翌朝の眠気、ふらつき、物忘れなど)
  • 飲み忘れの頻度と、余っている薬の量
  • 自分の希望(理由を知りたい、減らしたい、このまま続けたい、など)
  • 聞きたいこと

薬局でお手伝いできること

「メモを作るのも大変」「何を聞けばいいか分からない」という方は、薬局を使ってください。にこ薬局では、主治医に相談する前の準備をお手伝いしています。

  • お薬の整理:ほかの病院の薬や市販薬、サプリメントも含めて、今飲んでいるものを一覧にします
  • 飲み合わせの確認:飲み合わせを確認し、注意点や主治医への相談が必要な点をお伝えします
  • 余っている薬の確認:飲み忘れで余っている薬がどれくらいあるかを一緒に数えます
  • 相談メモづくり:主治医に聞きたいことを、一緒に整理します

ご自宅にある薬を袋にまとめてお持ちいただく「ブラウンバッグ」という方法もあります

なお、薬を減らす・やめるといった判断は、主治医が行うものです。薬局では、あなたが主治医と話しやすくなるための準備をお手伝いします。

にこ薬局はJR栗東駅東口から徒歩50秒!!お買い物やお仕事の帰りにもお立ち寄りください。

まとめ

長く飲んでいる薬に不安を感じるのは、自然なことです。自分の判断でやめずに、その気持ちを主治医に伝えてください。準備に困ったら、薬局に声をかけてください。

本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の治療については、主治医または薬剤師にご相談ください。

出典

  1. 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」2013年
  2. 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存(患者の皆様へ)」2022年2月
  3. 日本睡眠学会「睡眠障害の基礎知識」
  4. Reeve E, et al. Assessment of Attitudes Toward Deprescribing in Older Medicare Beneficiaries in the United States. JAMA Intern Med. 2018;178(12):1673-80.
  5. University of Michigan National Poll on Healthy Aging「Views on Medication Deprescribing Among Adults Age 50–80」2023年4月(論文版:J Gen Intern Med. 2024)

執筆・監修

にこ薬局 薬剤師 小田垣

2020年3月、JR栗東駅前にてにこ薬局を開局。

最終更新日:2026年9月29日

本記事は、文献調査と原稿作成の一部にAIを利用し、薬剤師 小田垣が内容を確認・監修しています。